セラミックスの手作りと
機械づくりの差

セラミックスには、CAD/CAMシステムを使用する「機械で作るセラミックス」と、「手作りのセラミックス」があります。
手作りのセラミックスには「プレス式」と「築盛式」があります。

  • 機械作り
    ミリングマシーン(削合機)
    CAD/CAMシステム
  • 手作り
    手作りの工程

    プレス式

    築盛式

作り方によって「歯の切削量」「精度」「噛み合わせ」「色調」「強度」「製作費」などに差があります。
「手作りのセラミックス」の方が優れた点が多いですが、
「機械で作るセラミックス」とどれくらいの差があるのか、比較してご説明します。

歯の切削量の差

手作りの方が断然
削除量が少なくすみます。

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「手作りのセラミックス」は「機械式(CAD/CAMシステム)のセラミックス」と比べて歯質の削除量が断然少なくて済みます。
手作りのセラミックスは切削ドリルを使わず、技工士がワックスで細かい凹凸まで再現し、セラミックスに置き換えて製作するので必要最低限の歯の削除で済みます。

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【大きさの比較】
人差し指との比較

機械(CAD/CAMシステムシステム)で製作するセラミックスは、セラミックスのブロックをミリングマシーン(削合機)の切削ドリルによって削り出します。
歯を切削し虫歯を除去した時のできる凹凸は、ミリングマシーン(削合機)の切削ドリルより小さく、セラミックスのブロックから削り出すことができません。そのため、機械(CAD/CAMシステムシステム)で製作するために歯を削るときには、切削ドリルがセラミックスのブロックから削り出せるように細かい凹凸が無いように滑らかに大きく削らなければなりません。その分どうしても歯の切削量が多くなります。

  • 手作りのセラミックスの場合の削り方
    必要最低限の切削量で済みます
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    虫歯除去後、切削面に細かな凹凸があっても手作りなら製作が可能です。そのため、切削量は必要最低限で済みます。
    手作り(プレス式)の流れ
  • 機械作りのセラミックスの場合の削り方
    大きく滑らかに削ります
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    虫歯除去後にできた(切削ドリルより細かい)ギザギザの凹凸はブロックから削り出すことができないため、切削ドリルでも削り出せるようにギザギザの凹凸が無いようにさらに大きく滑らかに削る必要があります。

精度の差

手作りの方が勝ります。
機械作りは修正が必要となります。

機械(CAD/CAMシステムシステム)で製作する場合、セラミックスのブロックをミリングマシーン(削合機)の切削ドリルによって削り出します。しかし切削ドリルより小さい凹凸は削り出すことができないため、どうしても隙間が出来てしまいます。
手作りの方が機械づくりより、精度は勝ります。

  • ミリングマシーン(削合機)
  • 切削ドリルの大きさの比較

微細な凹凸は
切削ドリルが削り出すことができません

機械作り
(CAD/CAMシステム)
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    削り出されたままの修復物を試適

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    切削ドリルより細かい凹凸は削り出せないので、どうしても隙間ができてしまいます。

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    掘り出されたセラミックスの修復物と石膏模型の間の隙間を、技工士が埋めて修正します。

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    セラミックスが隙間なくフィットしています。

※ 歯科医院によっては隙間の修正まで手が回らず、歯に装着時に接着用のセメントで埋めるケースも多く見られます。

手作り(プレス式)
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    ワックスで形造ります。
    ワックスなら細かい凹凸まで再現が可能です。

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    石膏を使いワックスの鋳型を作ります。

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    鋳型に圧力(プレス)をかけてセラミックスを流し込み、ワックスの形状をそのままセラミックスに置き換えます。

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    ジャストフィット!

プレス式の詳細な工程を見る
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    ワックスで形造ります。
    ワックスなら細かい凹凸まで再現が可能です。

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    デザインされたワックス

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    ワックスを石膏埋没材に埋没させます。

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    硬化した埋没材(中にワックスが埋没されています)

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    埋没材を高温の窯に入れて、中のワックスを焼いて蒸散させて鋳型を作ります。

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    セラミックスを溶かして圧をかけながら、鋳型に流し込みます。

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    鋳型から取り出したセラミックスです。ワックスで作った造形の細部まで再現されています。

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    修復物を切り離したところ

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    石膏模型にジャストフィット!機械式と違って切削量が少なく、適合抜群です。

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    着色します。

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    焼成します。

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    色調も適合も問題なし。
    完成です。

噛み合わせの差

手作りの方が勝ります。

セラミックスをセラミックスブロックから削り出すと、「切削面」と「咬合面」と「その他の面」ができます。
咬合面は上下の歯が噛み合う山(咬頭)と谷(小窩裂溝)からなります。上下の歯が噛み合う山(咬頭)と谷(小窩裂溝)が噛み合わせを決める重要なポイントです。
機械づくり(CAD/CAMシステム)はカメラのオートモードのように一律同様に製作するものと、カメラのマニュアルモードのように症例ごとにコンピューターのモニター上で個々の症例に応じて細かく機能的にデザインするものがあります。
手作りはさらに細かく繊細に咬合面の山(咬頭)と谷(小窩裂溝)のデザイン、その他の面のデザインが可能です。

  • 詰め物:インレーの場合

    詰め物:インレーの断面図

  • 冠=かぶせ物:クラウンの場合

    冠=かぶせ物:クラウンの断面図

色調の差

手作りの築盛式が断然勝ります。(手作りでもプレス式は、機械作り(CAD/CAMシステム)と差はありません。)

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CAD/CAMシステムという機械で作るセラミックスは、セラミックスのブロックからコンピューター制御でミリングマシーン(削合機)が削り出すためセラミックスのブロックのそのままの色で出来上がってきます。
プレス式で手作りする場合も、セラミックスは単色で出来上がってきます。

色調を合わせるのは「セラミックスの修復物に表面にステイン(着色)を付ける方法」と「セラミックスを築盛して内部から色調を合わせていく方法(色調だけでなく形態も整えていきます。)」があります。セラミックスを築盛して内部から色調を合わせていく方法の方が断然に綺麗です。

左端の画像をご覧ください。上がセラミックスブロックから削り出したままのセラミックス、下が色調を合わせて焼成したものです。焼成すると収縮します。本物の歯と見分けがつかない出来栄えです。(クリックすると拡大表示します。)

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表面にステイン(着色)を
付ける方法

セラミックブロックから削り出されたセラミックスやプレス式のセラミックスの単色の補綴物にステイン(着色)を付け、焼成して色調を合わせます。お茶碗やコーヒーカップの模様を描き焼成するイメージです。

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築盛式による製作の流れ

築盛式による手作りのセラミックスは、単色のブロックから削り出すのとは違って一からセラミックスを積み上げて色調を合わせながら作っていきます。色調だけでなく形態も整えていきます。
内部から色調を合わせていく築盛式と、表面で色調を整える機械作り(CAD/CAMシステム)の違いは、ゴールドの金無垢と金メッキのイメージが当てはまるかもしれません。金メッキは表面がはがれると中の金属色(銀色など)が出てきます。ところが金無垢は二つに割った断面も金色です。
築盛式による手作りのセラミックスの方が断然色調が勝ります。

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築盛式の詳細な工程を見る
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築盛式による症例
  • 築盛式による症例
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左がセラミックス、右が天然歯です。隣の天然歯と見分けがつかない仕上がりです。透明感、縞模様などはとても表面での着色では作り出せない色調です。

強度の差

差はありません。

たとえば同じe.maxというセラミックスを使った場合、「手作りのタイプ」と「ブロックから機械(CAD/CAMシステム)で削り出すタイプ」で強度に差はあるのでしょうか?
「ブロックから機械(CAD/CAMシステム)で削り出すタイプ」は、材質が均一なので技工技術の差に関係なく割れにくいです。
「手作りのタイプ」は、技工技術の差が強度にも関係してきます。
当院では熟練したセラミックス専門の技工士が製作するため、材質が均一で割れやすさも機械(CAD/CAMシステム)で製作するセラミックスと差はありません。

製作費の差

機械式(CAD/CAMシステム)の方が安くすみます。

セラミックスブロックから機械(CAD/CAMシステム)が削り出しただけのもの(隙間の修正、着色、焼成の過程を省いたもの)は安くすみます。
削り出されたセラミックスと歯の隙間を修正する過程(技工士が丁寧に隙間を修正して、着色して焼成の過程を平均3回繰り返す)を行なったものは、手作り(プレス式)と製作費に差がありません。技工士の手間暇がかかっているためコストがかかります。
手作りの築盛式は一番製作費が高くなります。

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